ガールズバーをめぐって

ガールズバーよく行かれるんですか? 一瞬何のことかと思ったが、そう言えばほっこりしつつアルコール飲料やフード類を摂取しに自分が時折立ち寄る某店舗、そうカテゴライズできなくもない。ははーんそのことね。けど、昨年ぐらいからよく目とか耳にする<ガールズバー>て何だ? 単純に言って
<女性バーテンダーがいるバー>
ということだろうから、ガールズバーというネーミングより先にガールズバーは特に珍しくもなく存在したことになる。また、自分もフレッシュマン時代よく先輩に連れて行かれたりしたスナックとの違いも明確ではない。まあどーでもええんやけど、これが大阪でも、現在メイドカフェ*1をリョーガする勢いで増殖中であると聞く。ビジネス街と繁華街が交差する微妙な立地のオフィスに勤務する私は、昨年後半あたりからか、そのような店のOPENチラシなどをスタッフらしい女性から受け取る機会が増えた。幹線道路沿いのオフィスビルから出てくる人たちに割引チケットを配っているバニーガールの姿は軽く衝撃だったが、その店ではスタッフの制服がバニー・スタイルということだった。今年に入ってそのような光景は見かけないので、たぶん“増殖”は都心からやや離れたエリアで起こっているのだろう。使うあてのない割引チケットをもらっては捨てていた頃、日経流通新聞とか雑誌類でも、そんな店が人気! みたいな記事を、お店紹介+何で流行るのかといった理屈のセットで目にするようになった*2。何となく記憶しているのは
<女性バーテンダーとのカウンター越しのリラックスした会話による癒し効果>
がポイントらしく、ターゲットとしては主に男性客が想定されていること。“ガールズ”が売りの割には結構慎ましい感じだが、
<パーッと騒いで発散するストレス解消ではなく日常的な癒しが求められている>
という説明は、いちおー理屈としては通っている。そんな訳で大まかな印象としては
<酒に関してややうるさ目の男性客をターゲットにしたカウンター席で飲むライト・キャバクラ>
といった感じだった。相手とのほどよく確かな距離を演出するカウンターは、同時にアストラアル建築*3的な理想の関係性を創造する。ところで、自分が直接聞く<私にとってのガールズバー>は、大雑把に言って二通りに別れる。
1:<ガールズバーは気楽に飲めるところが嬉しい>
自分は酒飲みにはほど遠い人間だが、リラックスしつつ決して崩れずにひとりでちょこっとだけ引っ掛けて帰りたい日もある。とは言え、酒に関する知識の乏しい自分の場合、バーという空間は少し気後れしてしまう。つまり、今までそーゆー場合にしっくり来る店がなかった。と、まあそんな感じの話。なるほどね。でも、腕と知識は確かだが典型的に無愛想みたいなバーテンダーだったら、例え相手が女性であっても(女性だったら尚のこと)やっぱり気後れしてしまうんじゃないか?*4
2:<ガールズバーはバーではなくフーゾクだ>
若干苦々しく思っているらしいのは、老舗の正統派(と本人の言う)バーが好きとか、酒&女の結びつきが嫌いとか、まあそのような傾向を持つ人の場合だが、これ、いろんな意味で微妙なところ。老舗のバーのマスターだって、ある意味“男っぷり”を売りにしている(或いは女性客がそこに“惚れる”)部分はあるだろう。ガールズバーの場合に限り同様の図式を不純と見なすような偏狭さはどうか。また、その筋で有名な師匠の元で学び何とかコンクールで優勝した類のバーテンダーしか認めないてなことを言い出した日には、日本は、バーとは呼べないバーでいっぱいになってしまう。それらは全部いらん店なんか? マージナルの領域が厳しいプレスを受けている今を象徴するかのようなこのテの潔癖主義、私はどちらかと言うと気色悪い。
やや逸れるが、<風俗>が狭義にはセックス産業を指すようになってから、そうでない文脈で用いられる<風俗>という言葉は、すっかり学術用語めいた風情を持つに至ってしまった。これは不自由だし、更に言えば何となく貧しい気分になってくる。そんなこんなで<ゆるい風俗>を奪還したいと思う。ガールズバーって、本来的な意味でまさに風俗営業らしい風俗営業やないすか。

付録:
特に営業妨害にならないと思うので、私がよく利用させていただいてる“ガールズバー*5”。ぐるなびのURLを。
http://r.gnavi.co.jp/k380100/
オープン時からあまり更新されてないのか、『スタッフは全員女性』とか、現状とは若干違うところもあるけど、だいたいはこんな感じ。サテがウマイよ。ちなみに、結果的に客層の中心は男性になってしまっているけど、もともとは<女性が利用しやすい店>を狙っていたようにも思える。“おうち感覚”とか“和み”といったキーワードが散見されるが、インテリアもまさにそのような線でコーディネートされている。その時々の自分の嗜好と流行モノの路線とが図らずも合致してしまうあたり、しみじみと俺ってケーハク。

*1:女性をメインターゲットとする執事カフェなんてのもあるらしいが、どんなもんだろう。自分は行ったことないけど、大阪にもあるんかな?

*2:ガールズバー>という言葉がどのへんから出て来たのかについてはようわからんけど

*3:直喩としての建築

*4:だから無愛想な女性バーテンダーのいるバーはガールズバーではない。てことなんやろね

*5:ちゃいます。とか、きっぱり言われそうな気がするけどな