実践関係MEMO(1)バランスについて

 「光で叩きますか? 闇で叩きますか?」あるいは「光の箒で掃きますか? 闇の箒で掃きますか? 笑いの箒で掃きますか?」という話を、<光の魔術><闇の魔術>といった概念と混同してしまったんでは訳わからないことになる。さらに善悪の概念と結びつけたりすると、ますます大きく間違うことになる。ここは…ハッキリ言って少々危険な落とし穴だと思います。L.V.X.がどうのN.O.X.がどうの以前の問題に対し、不用意にバランスうんぬんを持ち出し、こだわるのはどうしたものか。そういう状態をこそ、我々は<ドグマティック>と呼び警戒しているのでは? 
 思うにこれは<時間>の感覚に関係する。時間の感覚を伴わない静的な<バランス>など、単なる仮死状態に過ぎないと自分は思う訳です。どうせなら、Aの状態からBの状態へと移行する過程のバランスにこそ注目したいもの。



 タローのATU21<Universe>…トートの場合は。それ以外はだいたい<world>ですが、某惑星KING氏の著書などにも見られるとおり、「成就」とか「完成」といった意味を持つカードが、実占の場面においては、しばしば「単に動きがないことを表す」カードとして出てきます。すなわち<停滞>。これこそが、貴兄の言われる<バランス>の正体ではないでしょうか?
 


 養老孟司さんという変な人がいますが、氏のエッセイ(文庫本で読んだのか雑誌で読んだのか忘れた)に、「人間は倒れる力を利用して歩いている」「だから省エネ」なんだと。なるほど、四足歩行の動物たちは、たとえば猫科の動物たちは、チーターを筆頭にとても足が速い。ただし、すぐ疲れる。人間だって、全力疾走できるのはほんの一瞬だけですが、四足の動物は、歩くだけで膨大なエネルギーを消耗するらしい。<バランス>が良過ぎるために、一歩踏み出すのに大変なパワーが要ると。そんな訳で、とぼとぼとではあっても、とりあえず一日中歩き続けることができるのは、哺乳類の中でも人間だけなんだそうです。
 つまり、人類は、一時的に、スタティックな意味でのバランスを崩すことによって、さらに高次のバランスを手に入れた! 時間の感覚がしっかりしていなければ、もとよりそんな芸当は不可能でしょう。


 せっかくバランスの概念の拡大に成功し、ドゥルーズ的に言うなら<メカニック>なバランスを超える<マシニック>なバランスを獲得したというのに、何ゆえ自らすすんで四足歩行の状態に逆行してしまう必要があるのか。
 ちなみに、逆行による弊害を具体的に挙げると、
(1)ちょっとした行動を起こすのにも、膨大なエネルギーを必要とするようになる
(2)視点が低くなる(些細なことで気が散り、目的に集中することが困難になる)
の2つがあるように思います。