占術師と精神科医あるいはOLのメンタルヘルスに絡む風俗事情

 健康や医療の問題を「風俗」扱いとは何事か! と叱られたなら、いや、カタチから入るのが日本文化の伝統ですから、とでも答えるか。
 実際の話、「どーも凹んでて調子悪いから精神科医に見てもらおう(ご注意:たぶんこれ、ちょっと違います)」と思いつくこと自体、何とゆーか、社会にそーゆー風俗レベルのベースないしはそれなりの環境がないと難しい筈だ。今日のランチはインド料理にしよう! など、30年前のOLには思いつくことすら不可能だったように。



 以下は、私が本人から直接聞いた話。

 Aさんは30代の独身女性。20代後半で、それまでのキャリアを活かしステップアップを目指すかたちで転職。与えられた仕事は本人の希望と微妙に異なるものだったが、努力の甲斐あって上司や周囲から無事一定の評価を得るに至る。ただし、評価されたポイントと、本人が自信を持っている部分の間にズレがあったため、多少スッキリしないものがあった。Aさんはその後、意識して「周囲からの評価や期待に沿うように」行動するのが習慣となる。そんな事情で、一見仕事は順調そのものだったが、内面的には結構なストレスを抱えつつの毎日。そこへもってきて、この春の人事異動で畑違いの部署に配属される。配属替えは昇進のチャンスでもあったが、自分の描いていたキャリアヴィジョンは既に目茶目茶。おまけに、これまで「チョー苦手」と思っていたことを山ほど勉強する必要があり、体調を崩すなどストレスは限界に近づいていた…。
 いつかのように、占術師のところへ相談に行こうか? とも思ったが、最終的にAさんは、友人の勧めで心療内科*1を訪ねる。
 「ちゃんと話を聞いてもらえるし、占術師のように妙な説教をされることもない*2
と彼女は言う。
 Aさんはその後も、定期的に件の心療内科へ通い、「ストレスをコントロールし、正しい意思決定ができるよう」サポートを受けている。



 と、まあ、ありがちな話ではあるが、人間関係や職場の空気とか社風といった微妙な問題も絡んで相当にキツかったようだ。
 で、昨今では、これに類する状況に陥った際の選択肢として、「占術師」「カウンセラー」「精神科医」はたまたニューエイジ系の「ヒーラー」というふうに選択肢が増えましたと*3。これまでも精神科医がいなかった訳ではないが、多くはなかっただろうし、第一「キ○○イ病院」へ行くことを良しとしない文化的土壌とゆーのがあった。これがなかなかにとゆーか本当にタチが悪い訳であります。あと、選択肢の増加と同時に、占術師、ヒーラー、精神科医といった職業の人たちの扱う対象が、同じとは言えないまでも、かなりの部分でかぶっているという事実も、広く知られるようになりつつあるということ。
 このあたりを含めて「全体性の回復」への流れと見るのは乱暴だろうか?



 次のネタは、オタクカルチャーに象徴的に表れている(と見ることができる)日本文化の畸形性、即ち「視覚偏重」傾向についてハイハイ電話ね、ちょっと。

*1:心療内科は、元来心身症を専門に扱うところだが、実際には「患者が来院しやすいように名前を変えた精神科」である場合が多いという。Aさんの話には、「精神科医」「心療内科」両方の単語が出てきたため詳細はわからないのだが、彼女は「ストレスから体調を崩した」のであり、いわゆる精神疾患を患っていた訳ではないと思われるので、たぶん「心療内科」であっていると思う。と言うか、そうそう誰にでも話せない部分で何があったかは分からないので細かい詮索は不毛だ

*2:もちろん、すべての占術師=妙な説教をする人ではなく、たまたまAさんが、過去にそのようなタイプの占術師に当ってしまったという、あまり幸せでない経験を持つという話である

*3:選択肢が増えましたと:だからと言って、個人の趣味で選べば良いといった単純な話でもない。見当違いの店に行ってしまったため本当に欲しいものが見つからないばかりか訳の分からない無駄遣いをしてしまう…といったケースは、たとえそれが一時的な現象であったとしても、今後ますます増えるもの思われる