百貨店と広告(1)有楽町で逢いましょう

 1957年、有楽町そごうオープン。この時のキャンペーンソングが、『有楽町で逢いましょう*1』である。歌詞から、当時の風俗〜最先端ではなくある程度のボリュームゾーンを狙ったアプローチとその成果〜や、街の匂いを十二分に想像体感されたい。これは、歌謡曲を媒介として時間を遡り、自分の中に<ある瞬間>を召喚するMagickである。ちなみに、この曲を歌ったフランク永井は、以来「都会派」シンガーと呼ばれるようになった。らしい。
 データベース型消費、などと唐突にタイプしてしまった言葉がこの駄文とどう関係しているのかいないのか、日本の「風俗」が、現在も多分に百貨店的様相を呈しているのは、その原型が、まさに百貨店=都会のシンボルであった時代の産物であることを思うと、致し方ないのかも知れない*2




自分の解釈では、字幕中の「濡れて来ぬか」は間違い。歌詞のこの部分は、第一義的には「小ぬか」雨が「木」にかかっているという情景描写であり、あなたが濡れて「来ぬか」と「気」にかかっちゃうのよねという心理は裏の意味と考えられる。従って、無粋なわざわざの文字表記は必要ないはずである。

*1:1980年、村上龍は、『コインロッカーベイビーズ』の中で、主人公の一人、即ち捨てられていた二人の赤子のうちの一方「ハシ」が、成長してトランスセクシュアルのシンガーとなった場面で、自らの舌先を切り落としたとも噂される彼に、この曲を歌わせた

*2:と言うより、そもそも風俗とは、百貨店的な手法で創り上げられた、未だライフスタイルに至らぬつまりは実験段階を出ない遊びのスタイルを意味するタームであると考えられる