聖守護天使

 だからMagickか。と納得するのはしばしお待ちを。大真面目で天使などを召喚する西洋儀式魔術の場合も、少なくとも19世紀後半になると、唯脳論あるいは唯心論的な捉え方が主流となる。19世紀を代表する魔術結社であるG∴D∴*1、少なくともその<外陣>と呼ばれるソサエティが良い例で、要するに心理学のボキャブラリーで魔術を説明するのが当時の流行だったらしいのだが、やはり俗流解釈的薄っぺらさは拭えない。何にせよ、自分だけの<聖守護天使>とのコンタクトを究極の目標として掲げながら、<聖守護天使=高次の自己(ハイアーセルフ)>という解釈には、正直のところ筆者も、何だかがっかりさせられたものだ。その点、ロドニー・オルフェイスの*2の<HGA*3=自分以外の全て>は、自分の中のMagickへ向かうモチベーションを再び高めてくれるものであった。
 現在進行形のWestern Magickのコアな部分においては、「高次の自己」というHGA観は過去のものであり、術者の外側の存在/Entityであると認識されている*4

*1:黄金の夜明け団。メンバーの多くは、当時大流行の「降霊術」を小馬鹿にしていたか、関わっていることを恥ずかしく思い隠していたようだ。そう言えば自分が高校生の頃、クラスメイトの兄に、ディスコに足しげく通いつつ家ではKISSばっかり聴いているというナンギなのがいて、またデトロイトロックシティっすか?よお飽きませんねとからかったところ「オマエ喋ったらコロスからな」と真顔で言われたことがある

*2:

Abrahadabra: Understanding Aleister Crowley's Thelemic Magick

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*3:Holly Gardian Angel:聖守護天使

*4:少なくともThelemaの潮流においては。また、HGAの話からは多少逸れるが、天使から授かったと言われるエノク語を用いた「エノキアン・マジック」の場合も、スマートに洗練され、自らの良識との間に葛藤を生み出す怖れが少ないと思われるG∴D∴/黄金の夜明け団スタイルよりも、よりルーツに近いスタイルの探求に向かう実践が主流である

Enochian Vision Magick: An Introduction and Practical Guide to the Magick of Mr. John Dee and Edward Kelley

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